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与信管理の基準の設定方法~与信限度額の設定方法とポイント

与信管理で何よりも大切なものは、明確な基準です。基準を設け、順守することにより、多種多様の取引先に対して与信管理を適切に行えるようになります。

与信管理基準にはいくつかの考えが存在し、基準の軸をどこに置くかにより、必要な情報や管理方法が変わってきます。本記事では、与信管理の基準設定から与信限度額設定のポイントまで、運用方法を幅広く紹介します。

目次
  1. 与信管理の基準とは
  2. 与信管理の基準設定の流れ
  3. 与信限度額の設定方法
  4. 与信限度額設定のポイント
  5. 与信管理を代行するサービスの活用により請求業務を効率化
  6. まとめ

与信管理の基準とは

適切な与信管理を行うためのポイントに、取引上限額の設定があります。この取引上限額を「与信限度額(与信枠)」といい、与信限度額の設定にも明確な基準が求められます。

基準を定めることで、さまざまな取引先に対して一定のルールにもとづいたアプローチで与信限度額を設定できます。また、継続的に運用しながら基準を調整することにより、与信管理はより精細になり、事業リスクの軽減につながります。

関連記事与信管理規程の作り方~遵守のための工夫や限度額の設定・規程の雛形

与信管理の基準設定の流れ

与信管理の基準設定は、下記の流れで進行します。

  • 取引先の情報を収集する
  • 情報の審査
  • 与信限度額の設定

取引先の情報が不足していると、取引をして問題がないかを判断することができません。そのため、情報収集は何よりも大切になります。あまり情報を公開していない企業もあるため、情報収集・調査にあたっては有料サービスの利用も方法のひとつです。

必要な情報が集まり次第、審査に入ります。リスクが懸念される情報はないか、取引しても問題がないかを確認します。なお、意図的にインターネット上の情報を隠匿している企業も存在するため、ここでも有料サービスを利用し過去の記事を検索することも有効な方法です。

取引先の情報を精査し、問題がなければ、与信限度額を設定します。

取引先の情報を収集する

取引先が上場企業なのか非上場企業なのかで、情報量には大きな差が生じます。上場企業であれば会社情報から財務情報まで幅広く公開しているため、たくさんの情報を容易に取得することが可能です。

一方、非上場企業となると限られた情報しか公開されていないことが一般的です。そのため、インターネットからの情報取得や有料調査サービスによる情報取得(外部情報)、また直接取引先へ訪問した際の雰囲気などの情報(内部情報)を上手に収集することが大切です。

有料にはなりますが、商業登記を調べることも有効な手段です。外部情報では主に下記の項目を意識し、その後の審査に役立てましょう。

  • 本社住所と登記簿の住所が一致しているか
  • 公表されている役員名に差異はないか
  • 年商や資本金などの財務情報

関連記事与信管理の方法~与信承認から事後管理までの手順マニュアルと重要性

情報の審査

代表者が頻繁に変わっている場合は注意が必要です。懸念されるリスクを検索ワードに含め、評判や会社の雰囲気を確認していきましょう。口コミサイトからも情報を取得できますが、そのすべてが正しい情報とは限りません。参考程度に捉えるとよいでしょう。

商業登記を取得している場合は、商号・住所・代表者・事業内容などの基本的項目の変更状況を確認します。不自然な移転を繰り返している場合は、移転理由を必ず調べましょう。

直接取引先に訪問して得られる内部情報も重要な審査情報になります。担当者や社内の雰囲気に違和感がないか、注意しなければなりません。

情報を確認する担当者により、審査の粒度や捉え方は異なります。そのため、ある一定の基準をあらかじめ定めておく必要があります。

与信限度額の設定

取引が増え売上が増加すると同時に、代金が回収できないリスクも高まります。継続的に取引を行っている取引先であっても、業績が悪化して代金の回収が滞る可能性は否定できません。

与信限度額とは、取引先にどのくらいの売上を立ててもいいのか、その上限となる金額です。新規取引先の場合は取引実績がないため、最初から大型の取引をするにはリスクを伴います。また、継続的に高額取引を行っている場合であっても、与信限度額を引き上げ続けたフェーズで突然取引先が倒産するということもあり得ます。

取引先の状況を定期的に確認しながら与信限度額を設定することが、リスク軽減のために重要です。

与信限度額の設定方法

与信限度額の設定は、必要かつ安全な範囲内であることが大原則です。慎重になりすぎた結果、少ない金額を設定し続けていては売上が伸びず、事業の推進は望めません。一方、売上を伸ばすために限度額を高額に設定し、たくさんの製品やサービスを提供しようとしても、会社の体力がない場合はリスク過多なポジショニングとなりかねません。

会社経営に必要な金額であること、製品やサービスを提供し続けられる範囲であること、これらを勘案した基準を設定していきます。

与信限度額の設定方法にはさまざまな基準がありますが、ここでは下記の基準について紹介します。

  • 自社の純資産を基準にする
  • 自社の売上債権を基準にする
  • 取引先の仕入れ債権を基準にする

自社の純資産を基準にする

自社の純資産を基準にしての与信限度額設定では、仮に債権回収ができなかった場合でも、ある一定の割合までであれば耐えられる範囲にする必要があります。一般的に純資産の一定割合は10%が許容範囲とされています。

全取引先一律で同額の与信限度額で問題がなければ、許容範囲を考慮した金額を設定すればよいのですが、取引先によって金額設定を調整したい場合は、信用度による格付け(ランク)を行い、ウェイトを設定します。

自社の純資産を基準とした与信限度額は、以下の計算式で算出できます。

信限度額自社純資産× 一定割合× 格付けウェイト

自社の売上債権を基準にする

売上債権とは、売掛金や受取手形の代金を受け取る権利です。あくまでも権利なので、すぐお金になるとは限りません。売上があり、帳簿上の利益が出ているものの倒産してしまう黒字倒産は、この売上債権の管理がうまくいかないことが原因です。

自社の売上債権を基準にしての与信限度額設定では、売上債権を回収できなくても耐えられる範囲内とします。一般的に売掛金は1~2か月後に回収されますが、受取手形は2~3か月後になることも珍しくありません。売上債権と手元の現金のバランスをうまく調整することが大切です。

自社の売上債権を基準とした与信限度額は、以下の計算式で算出できます。

与信限度額自社売上債権× 一定割合× 格付けウェイト

取引先の仕入債務を基準にする

取引先の仕入債務を基準にした与信限度額の設定。これは自社の債権割合が大きくなりすぎないように調整する方法です。

仕入債務とは買掛金や支払手形のことです。仕入債務状況は取引先の支払能力の推定にもなり、この金額が大きいほど、将来支払える金額が大きいということになります。

取引先の財務情報が手に入らない場合は、売上高から算出することが可能です。業界平均値を利用し、売上から売上債権と売上原価を算出、仕入債務の概ねの金額を割り出すことができます。なお、業界平均値は、それぞれの業界団体などが公表しています。

仕入債権を基準とした与信限度額は、以下の計算式で算出できます。

与信限度額仕入債権(推定)× 一定割合× 格付けウェイト

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与信限度額設定のポイント

与信限度額は一度設定して終わりではありません。自社や取引先、マーケットの状況を勘案しながら調整をしていくことが必要です。

しかし、会社の規模が大きくなり取引先が増えれば増えるほど、与信管理自体に目が届かなくなるケースは少なくありません。また、与信管理は複数の部署が協力し合うことにより成り立つシステムですが、部署ごとに業務があるため、ひっ迫した状況においてはぞんざいに対応されることも考えられます。

与信限度額を設定し、円滑に運用するためのポイントを確認していきましょう。

  • 与信管理専用の部門を作る
  • 取引先に何を求めているか明確にする

与信管理専用の部門を作る

与信管理は取引先の情報収集、格付けなど、地道な作業と公平な判断が不可欠です。取引先との距離が近いことから、営業部門が与信管理を兼任する場合がありますが、これは諸手をあげておすすめすることはできません。

営業部門はより多くの売上を獲得することが最優先されます。そのためなら、多少基準を外れても問題ない、という思考に陥ることも少なくありません。また、取引先と直接コミュニケーションをとる機会が多いので、経営不振に陥っている取引先に対して、どうにかして貢献しようと売上を増やし、結果倒産してしまい損失を被る、ということも考えられます。

そのため、専門部署の設置は、与信管理を円滑に運用するための一助となります。

関連記事与信管理はどの部署が担当するべきか?専門部署を設けない場合の選択肢

取引先に何を求めているか明確にする

与信限度額を設定するにあたり、一つひとつの取引先について、自社が考えるポジション・期待値を明確にすることも大切です。

安定した業界で継続的な取引を望むのであれば、限度額を徐々に上げていくことも必要ですし、業界の状況などから取引を終了させたいと考えるのであれば、徐々に限度額を下げていくことが求められます。

取引先の経営理念や方針、今後の展開を明確にしておくことで、的確な与信限度額の設定を行うことができるのです。

与信管理を代行するサービスの活用により請求業務を効率化

商品やサービスの入金フェーズひとつとっても、業界や商材に応じて多種多様であり、生じる問題もさまざまです。たとえば、入金が確認できてから受注を行う販売タイプであれば、入金確認後から受注までのタイムラグが発生します。そのため、金額が大きくなるほどに先払いに不安を抱くことになり、後払いを希望する取引先が多くなります。

この場合に与信管理が必要となりますが、そのぶんの業務工数が増え、さらに受注までの時間もかかることになります。

こうした問題は、与信管理を代行するサービスの活用により軽減・解決が可能です。与信管理代行する、BtoB掛売り決済サービス「Paid」の導入効果を、実際の事例からご紹介します。

導入企業 Terra Drone株式会社
業種 卸・販売
  • 【Paid導入前の課題】
  • 経理や事業責任者の確認工数や与信管理の手間がかかる
  • 前払いはお客様の不安や出荷までのタイムラグにつながる
  • 購入が先払いのため、資金繰りが気になる
  • 【Paid導入後の効果】
  • 与信管理を外出しすることで大幅省力化
  • 出荷までのタイムラグが最大で10分の1に
  • Paid早期払いの活用で資金繰りに余裕ができた

与信管理は作業時間や手間がかかるものです。「Paid」活用により、与信管理にかかる工数を軽減。未回収リスクを軽減するとともに省力化を実現し、営業活動や戦略人事など、売上拡大に直結する職務にリソースを効果的に注げるようになります。

関連記事出荷までの時間は最大10分の1に~Terra Drone株式会社の導入事例

まとめ

与信限度額の設定には、自社の事業環境に応じた明確な基準策定と継続的な管理が欠かせません。現状の与信限度額の設定に不備はないか、基準とする項目は適切か、社内リソースを過度に圧迫していることはないか。あらためて振り返るとともに、ツール導入による効果にも目を向けてみてください。

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